研究内容

 1991年度から現在まで,本センターの前身である水素同位体機能研究センターの研究領域はトリチウムから水素同位体へと広がり,水素同位体の機能性,材料開発,励起状態のトリチウム研究,及び大量トリチウムの安全取扱いシステムの開発などに関し多くの研究成果をあげています。

研究分野

1. 基礎物性研究分野

 トリチウムの安全取扱い上の諸問題、放射線効果および同位体効果に関する研究とデータベース化を進めています。

<100Ci トリチウム取扱いシステムの操作状況>
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 平成7年度に設置された”3種の水素同位体を同等レベルで取り扱える”100Ciトリチウム取扱装置を中心にトリチウムに関する研究を行っています。
 100Ciトリチウム取扱装置は、約20年間に及ぶ当センターで培われてきたトリチウム取扱技術および手法を 集大成したものです。


 

<100Ci トリチウム取扱いの構成概略図>
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 本装置単独でトリチウムの貯蔵・供給・精製・同位体分離が行え、希少資源であるトリチウムを再利用できる構成となっています。
 再利用を行うことにより、放射性廃棄物の発生を最小限に抑えています。実験チャンバーにはECR装置を備えておりトリチウムプラズマの実験を行うことが出来ます。


 

<水素同位体分離のクロマトグラム例>
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 同位体分離装置が軽水素および重水素を含む使用済みのトリチウムを分離して、再利用できる性能を有していることを示しています。


 

<100Ciトリチウム取扱いシステムへの制動X線測定装置の取り付け状況>
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 高濃度のトリチウムを非破壊かつ簡便に測定が行える、当センターで研究開発を行った制動X線測定法の更なる 適用分野の拡大を目指しています。


 

<元素状トリチウム濃度測定用制動X線検出器の概観>
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 本検出器は高濃度の元素状トリチウム濃度を非破壊で測定するために、本センターで新しく開発されました。
(内容量:約40cm3)


 

2. 応用物性・バックエンド技術研究分野

トリチウムの有効利用を図るために材料中でのトリチウムの挙動、その制御技術およびバックエンド技術に関する研究開発を進めています。

<水素同位体の室温分離装置 (左)と トリチウム除去装置(右)>
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 水素同位体を含む廃棄物からの水素同位体の抽出と同位体分離の研究を行っています。
 水素吸蔵合金を利用したトリチウム化合物からのトリチウムの回収法の研究では、化合物の分解ベッドとトリチウムの回収ベッドを直列に配置することにより元素状トリチウムの回収が行えることを実証しました。
 従来、極低温で行われている水素同位体の分離をガスクロマトグラフのカラム材にパラジウム合金を用いることにより室温で行えることを見出しました。この方法は金属への水素の吸収と放出を利用するためHDガスの同位体効果が起こりD2及びH2の留分として回収できる利点も兼ね備えています。


 

<室温作動型ガスクロマトグラム>
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 従来は、極低温で行なわれている水素同位体の分離を、パラジウム合金により室温で行なえることを見出し、分離開始後から18分を境に、重水素と軽水素が室温で分離されることを実証しました。


 

<乾式処理法によるトリチウムの除去>
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 トリチウム分子を直接的に合金(ゲッター)中に固定する方法(乾式処理)を開発し、実際にトリチウム水の分解とその後のトリチウム分子の直接回収が速やかに行なわれることを実証しました。


 

3. 素材循環研究分野

水素エネルギーシステムおよび核融合炉システムに用いられる燃料および各種の素材・材料の循環利用法に関する研究開発を進めています。

<非蒸発型ゲッター材料>
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 水素同位体を安全かつ効率的に貯蔵・供給・回収するために用います。


 

<遊星型ボールミル>
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 非平衡状態の合金を作成でき、新しいニッケル水素電池用水素吸蔵合金などの開発に用いています。
 水素を燃料としたエネルギー変換デバイス(燃料電池、二次電池、キャパシタ等)に関する研究も行っており、その性能評価手法の確立を目指すとともに、性能を左右する触媒等のキーマテリアルの研究を行っています。


 

<自動PCT特性測定装置>
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 ゲッター材料による水素同位体の吸収・放出特性を、自動的かつ正確に測定できます。
 水素同位体を安全かつ効率的に貯蔵・供給・回収するためには水素吸蔵合金の利用が必要不可欠です。当センターではトリチウム貯蔵・供給・回収用としてZrNiを利用し、その安全性と耐久性を評価しています。また、ニッケル水素電池に用いる合金としてMgNi系合金を提案し、その研究開発を進めています。


 

<ニッケル水素電池の性能試験の様子>
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 水素を水と金属水素化合物との間で循環させ、水素から電子を取り出し、その電気エネルギーを貯蔵・放出します。


 

<焼結法により作製したMg2Ni合金電極の放充電特性>
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 550℃で焼結させると寿命が飛躍的に向上することを示しています。