水素同位体環境科学研究

メインの担当スタッフ: 
田口 明

福島第一原子力発電所の事故により生じたトリチウム汚染水の処理・処分は喫緊の課題です。水素同位体科学研究センターでは30年間培ってきたトリチウムに関する知識、取扱技術を用いてこの問題解決に向けた研究を行っています。

水素同位体の分離・濃縮・回収

安価で効率的なトリチウム回収法を開発すると共に、その技術を発展させ、安価で大量の水素製造法の開発、核融合炉内の燃料トリチウムのリサイクリングに必要な技術の開発を目指します。 これらの研究により福島第一原子力発電所で発生したトリチウム汚染水の処理へ貢献すると共に今後の水素エネルギー社会に向けた基礎技術を開発します。
メソ多孔体(MCM-41、SBA-15)、ゼオライト(LTA、MORなど)、アモルファスシリカによる固-液トリチウム吸着実験から得られた、各吸着材の吸着容量と分離係数の関係を示します。 メソ多孔体が既往のゼオライトやアモルファスシリカと比較して、高い吸着容量、分離係数を有することを見いだしました。

トリチウムの濃縮と計測

トリチウムはエネルギーの小さなβ線のみを放出するため、測定の難しい放射性同位元素の一つです。また、現在の環境中のトリチウム濃度は極めて低濃度であり、 測定するためにはトリチウムを濃縮し測定する必要があります。このため、環境中のトリチウムを測定するためには、煩雑な試料調製と長時間の計測が必要です。 一方で、福島第一原子力発電所の事故で発生するトリチウムを含む汚染水の処理が問題となっており、迅速なトリチウム測定法の確立が望まれています。
センターでは、トリチウムの濃縮法と液体シンチレーションカウンタを用いたトリチウム計測法に関する研究を精力的に進めており、環境中あるいは食品中の トリチウムの迅速な測定法の確立を目指しています。さらに、ここで培われたトリチウム濃縮法を汚染水中のトリチウム除去への応用を検討しています。